
「マンション・ビルの修繕工事でウレタン塗膜防水工事を行うことになった。」
「漏水を修理するため、ウレタン塗膜防水を行うことになった。」
当記事はではウレタン塗膜防水のメリット・デメリットを含め、業界課題の実態を徹底解説します。
※当記事を読めば、ウレタン塗膜防水工事についての基本的な理解ができます。
当記事を読むのに5~10分かかります
それでは解説に行きましょう。
1.ウレタン塗膜防水工事とは?
ウレタン塗膜防水工事とは
ウレタン樹脂が湿気や異液混合による化学反応によって硬化する特性を活かして、液状状態のウレタン樹脂を刷毛、こて、ゴムベラを用いて特定の下地に対して所定量を塗布し、防水の膜を形成していく工事になります。
つまり塗れば固まり防水層を簡単に形成できるってことですね。
↓実際の防水工事の状況写真です。
この塗布している液状状態のウレタン樹脂が化学反応によって硬化します。

この防水工法は、屋上やバルコニー(ベランダ)、共用廊下、庇など様々な場所で扱われています。
また必要な工具や電動工具も、他防水工法と比べて少量で済みます。
必要な工具
「金ゴテ・ゴムベラ・刷毛・重量測り」
必要な電動工具
「攪拌機(ミキサーみたいのものです)」
他の防水工法より高い施工容易性
塗膜防水は、基本塗るといった動作で完結する防水工法であるため、
作業工程ごとの動作が非常に単純です。
ちなみに塗布防水以外の防水工法となると、扱う道具類が3~5倍以上に膨れ上がり、
作業工程によって発生する動作が複雑化します。
(塗ったり、穴を開けたり、火を使ったり、金物を付けたりなど)
つまり施工容易性という観点からみて、ウレタン塗膜防水は他防水工事と比べて圧倒的に優位であるということになります。
ウレタン塗膜防水の強み:継ぎ目のない防水
施工容易性以外にも塗膜防水には他防水工法と比べて大きく異なるメリットがあります。
塗膜防水は継ぎ目のない防水を形成することが可能であるということです。
先ほどもお伝えしましたが、ウレタン塗膜防水は液体状態のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成します。
例えば100㎡の床にウレタン塗膜防水を行う場合、液状状態のウレタン樹脂をその床に塗布しますよね。
数時間後、その塗布した液体が硬化した防水層に継ぎ目という概念は存在するでしょうか?
「もちろんしません。」
つまりウレタン塗膜防水においては、継ぎ目による漏水の可能性は”0”であると示されます。
これは塗膜防水の圧倒的な強みとも言えるでしょう。
「んじゃ、ウレタン塗膜防水一択でいいじゃん」
もちろん、ウレタン塗膜防水は素晴らしい工法であり、その信頼性も高いです。
しかし、様々な防水工法があるように、ウレタン塗膜防水にもデメリットが存在します。
ではウレタン塗膜防水のメリットを理解できたところで、次はウレタン塗膜防水のデメリットをみていきましょう。
2,ウレタン塗膜防水のデメリットとは
一見優れた工法であると思いきや、塗膜防水にもきちんとデメリットが存在します。
そのデメリットが起因する原因として大きく2つに分類できます。
1. 人 / 2, メンテナンス
まずは人によるデメリットから見ていきましょう。
作業員の力量によって変化する施工品質
ウレタン塗膜防水は人の手によってその防水層を形成していきます。
人の手によって形成される防水層では膜厚にムラが生じる可能性があり、
施工品質が作業員の技量に偏る傾向にあります。
作業員の手抜きがばれにくい?
本来、防水材を2回塗布しなくてはいけない作業工程を省き、
1回しか防水材を塗布しないといった、あからさまなルール違反の手抜きを行う業者が、業界では頻繁に行われております。
このような手抜きにより、本来発揮できる防水の耐久年数が 著しく低下する可能性があります。
決してやってはいけないことなんですが、
何故このような手抜きが起きてしまうのか。
一つ目は手抜きがばれにくいこと
二つ目は作業員への経済的・又は時間的圧迫によるもの、
三つ目は手抜きをしても耐久年数が保証期間を耐えてしまうことにあります。
順を追って説明していきます。
⇒手抜きがばれにくい。
ウレタン樹脂にて防水層を形成したのち、その防水層を保護するために仕上材を塗布します。
つまり仕上げ材を塗布された後では、
ウレタン樹脂がきちんと2回塗布されているのか
目視では判断ができなくなるということです。
⇒作業員への経済的圧迫
建設、改修修繕業界では、4次・5次請けといった多重下請け構造により、
末端単価が著しく低下している可能性があります。
この末端単価が適正価格ではない場合、
業者は赤字にならぬよう手抜きをせざるを得ない状況に陥っている場合があります。
⇒作業員への時間的圧迫
工事には必ず工期というものが存在します。
この工期が短くゆとりがない場合、施工業者は期限までに工事を完成させるため、作業員を増員するか、手抜きを行うかの2択の選択肢に迫られます。
もちろん、作業員を増員すればいいだけの話しですが、、
業界全体が繁忙期となると作業員の増員が困難になったり、
そもそも多重下請けの影響により増員する予算がない場合、施工業者はどのような選択をするでしょうか。
元請会社に工期延長を直訴する場合もあります。
しかし元請会社は、工期延長により予算計画にない経費が発生するのを嫌がります。
その他、決算月に売上を計上したい会社都合的な目的があったり、
工期延長による損額料を支払う契約を交わしているため損失をしたくない(=契約によります)など、元請会社は工期延長をするメリットがない場合が多く、工期を優先する傾向にあります。
もう一度問いますが、このような状況下で施工業者はどのような判断をするでしょうか。
⇒手抜きをしても耐久年数が保証期間を耐えれる?
防水工事には保証が適用されます。
そのため手抜き行為をした業者は漏水保証リスクが伴います。
しかし近年の材料の性能が向上しているためか、手抜きをしても(防水膜厚が不足しても)
保証年数を耐えれる傾向にあるため、手抜きのリスクがほぼ皆無状態となっています。
「保証年数を耐えれるのであればいいのでは?」
このように主張する業界の方もいますが、私は断固として否定します。
勘違いをしている方もいますが、我々が提供しているのは保証年数ではなくその性能です。
従来の品質を提供すれば、保証年数以上の価値を提供できる可能性があり、修繕サイクルの12年毎が、15年毎、20年毎に変わり発注者の大きな利益になる可能性があります。
発注者が対価を支払っている以上、我々はそれ相応の価値を提供しなくはいけません。
日洋エフフィールではこの業界的課題の解決に向けて様々な取り込みを実施しております。課題解決に向けての発信は当記事の本質ではないので割愛させて頂き、後日別記事にてご紹介します。
ウレタン塗膜防水のメンテナンスが大変
ウレタン塗膜防水は、何よりもメンテナンが大変だと言われております。
ウレタン塗膜防水の長寿化を図るためには、塗替えを5年に1回実施しなくてはいけません。(通常の仕上げ材の使用の場合)
仕上げ材が劣化し防水層が露出すると、紫外線や雨風の影響により防水層がボロボロになってしまいます。
仮に保証年数が10年あったとしても、仕上げ材のみ5年に1回塗替えなければ適用されません。万が一を考えたら仕上げ材の塗替えを行う必要があります。
一方で防水施工と塗替えをきっちり行えば、15年以上防水効果を発揮できる可能性が十分に上がります。
また、近年では保証適用期間内での塗替えを行う必要がない仕上げ材料が開発されております。
施工単価は上がりますが、是非、検討してみたらいかがしょうか?
まとめ
当記事をご覧になっていかがでしたでしょうか。
今回はウレタン塗膜防水のメリット・デメリットも含め、業界の課題について少しだけ触れさせて頂きました。
業者の実態や課題、そして防水材の知識を深めることにより当記事をご覧になった方の少しでも利益になれば幸いです!
発注者、業界にかかわるプレイヤーや含め、相互Win-Winになれるような未来を作るため、今後も啓蒙活動を実施してまいります。
↓最後に当記事のまとめを載せて終了します。また次回もよろしくお願いします!
ウレタン塗膜防水のメリット
1, 施工容易性が高い
2, どんな形状でも塗ったら防水層が形成できる
3, 継ぎ目のない防水が可能。継ぎ目からの漏水の可能性は”0″!
ウレタン塗膜防水のデメリット
1, 作業員の力量に品質が大きく左右されやすい
2, 手抜きがばれにくい
3, メンテナンスが大変